抽象語から視覚イメージを形成する場合, 具象語の場合よりも形成は困難であり, 形成に要する時間が延長することや, 形成されたイメージが不鮮明になることがわかっている。本研究では, 抽象語から視覚イメージが形成される過程について検討するために, 抽象語および具体語から形成される視覚イメージの内容, 鮮明度, 形成時間を調べた。その結果, 従来の研究と同様, 抽象語よりも具象語のイメージの形成時間が短く, また鮮明であった。さらに各参加者のイメージ形成について詳しく調べたところ, 全体的傾向とは異なるさまざまなパタンが観察された。また, 抽象語から形成されるイメージの内容報告は多様であった。具象語と同様に具体的な事物がイメージされる場合のほか, 抽象語の意味を表現するような現実的場面, 非現実的場面, また実際の過去体験など, さまざまな種類の内容が報告された。