広島大学心理学研究 8 号
2009-03-31 発行

大学生の「よい子」傾向と心理社会的発達段階の関連 <論文>

The relationship between "good children" and psychosocial development in university students
菊池 由莉
全文
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Abstract
本研究は, Erikson(1950 仁科訳 1977/1980)の視点から, 「よい子」の心理社会的発達を検討するものである。本研究では「よい子」を, 宗像(1997)に依拠し, 「周りの人との関係の中で, 自分の肩を持ってくれる人に気に入られようとして, 自分の感情を抑えてでもその人の期待に応えようとする『自己抑制型行動特性(通称イイコ行動特性)』を持つ青年」と定義した。仮説として, 「よい子」傾向が高くなるほど, ①「信頼性」「自律性」「自主性」「アイデンティティ」の達成度は低くなる, ②「勤勉性」の達成がよい, の2点を挙げた。質問紙調査を実施し, 大学生214名から有効回答を得た。分析の結果, 本研究の「よい子」は, 「自己の抑制・喪失」, 「他者の意向に沿おうとする」という2つの特徴を有していた。さらに「よい子」傾向と心理社会的発達段階の関連を検討したところ, 「よい子」傾向が高まるほど, 「信頼性」, 「自律性」, 「自主性」, 「勤勉性」, 「アイデンティティ」, 「親密性」, 「統合性」の達成度が低くなることが示された。
著者キーワード
「よい子」
心理社会的発達
アイデンティティ