コンピュータ媒介型コミュニケーション(以下CMC)では、高レベルの自己開示を行っているという研究結果が示されており、その促進要因として、視覚的匿名性と自己意識が指摘されている。また、視覚的匿名性が自己意識に影響すると示唆されているが、その影響は検討されていない。よって本研究では、視覚的匿名性の自己開示への直接的な影響を検討すると同時に、私的自己意識・公的自 己意識を媒介変数とした視覚的匿名性の自己開示に与える影響を検討した。視覚的匿名性(視覚的匿名性・非視覚的匿名性)の1要因を独立変数とする実験参加者間計画であった。自己意識(私的自己意識と公的自己意識を媒介変数とし、自己開示(量と深さ)を従属変数とした。実験参加者は、大学生64人であった。アルバイトの話題に関して、視覚的匿名性群は文字のみのチャットを行い、非視覚的匿名性群はビデオチャットでお互いの顔を見ながらチャットで会話した。30分経過した時点で実験は終了し、その後質問紙に回答させた。共分散構造分析の結果、視覚的匿名性から自己開示への影響は全く見られず、視覚的匿名性と自己意識が並行して、直按的に自己開示に影響しているという過程が存在することがわかった。