本研究では,育児期の女性を「個人としての自己」と「母親としての自己」という視点から捉え,二つの自己の葛藤における特徴,及び,それぞれの母親が抱えている育児困難の特徴について検討した。対象者は,二つの自己の確立度により4つの自己様態群に分類された。二つの自己の確立度によって,母親役割を受け入れる段階で葛藤している母親,葛藤を回避している母親,葛藤が生じていない母親,葛藤を経て統合させている母親といった葛藤経験の特徴が示された。また,2つの自己の位置づけと葛藤のあり方が,育児困難の内容や程度と関連していることが示唆された。