本稿では,「個」と「関係性」からみたアイデンティティ研究が展開される中で,発達早期における「個」と「関係性」の起源を考察する必要があることに着目し,「個」と「関係性」からみたアイデンティティ生涯発達の基盤となる理論を概観した。そして,「個」と「関係性」からみたアイデンティティ研究において,「関係性」の次元,すなわち,個体内関係性と社会的関係性をとらえる必要があることを提起した。今後は,「個」と「関係性」からみたアイデンティティに関する実証的証拠を提示すること,および,発達早期の自我形成がのちのアイデンティティに及ぼす影響について検討することが必要である。