最近の空間認知に関する発達的研究では、視点取得課題における子どもの自己中心的反応は、空間情報の1次的使用(外的参照枠に基づく定位)と2次的使用(他視点からの見えの推測)の両者をうまく協応できないために生じると考えられている。しかし、そうした研究では見えの推測における正誤のみが検討され、対象の見え情報と位置情報の使用に関する発達的知見は十分に得られていない。本研究では、5歳から6歳の子ども28名を対象に、3つの対象物の布置を呈示し、布置を隠した後、180度異なる地点に移動させ、見えの再構成(呈示時の見えのとおりに布置をつくる)および対象の定位(対象物の位置を指し示す)をおこなわせた。その結果、多くの子どもは、見えの再構成において対象物が隠されている位置に一致するように布置を構成した。また、見えの再構成に成功した子どもでも、その半数は対象の定位において正しい位置を指し示すことができなかった。したがって、幼児は空間情報を主に1次的に使用しており、現在の位置情事臣と過去の見え情報の協応が困難であることが示唆された。