本研究の主な目的は,精神的回復力が精神的健康の維持にとって重要な要因であることを確認することである.大学生を対象に調査を行い,203名を分析対象とした.分析の結果,精神的回復力の高群は低群よりも,最もつらいネガティブ経験に対する落ち込み得点が低い傾向にあった.また,コービング方略の使用について両群間で比較した結果,高群は低群よりも落ち込みを低減させるコービング方略を使用する傾向にあるのに対して,低群は高群よりも落ち込みを増幅させるコービング方略を使用することが示唆された.性差については,女性が男性よりも落ち込みやすい傾向にあった.また,男性は女性よりも,落ち込みを低減させるコービング方略を使用する傾向にあるが,女性は男性よりも,落ち込みを増幅させるコービング方略を使用することが示唆された.精神的回復力得点には性差が見られなかったので,精神的回復力が単独で精神的健康を維持するのに寄与するのではなく,コービング方略との相乗効果による可能性が示唆された.