本研究では,幼稚園の年中児及び年長児を対象として,場面想定法を用いた実験を行い,他児が泣いている場面を目撃したとき,幼児が,①泣いている他児を慰めるために向社会的判断を行うのか,②向社会的判断に際していかなる方略を生成するのか,③自ら生成した方略を実行することによって他児を慰めることができると肯定的に自己評価するのかを検討した.なお,幼児の向社会的判断及び自己評価に影響を及ぼす要因として,泣いている他児との親密性(高い,低い)を取り上げた.主要な結果を以下に記す.女児は,親密性の低い他児に対して向社会的判断を行わない傾向があった.男児は,女児に比して,泣いている他児を積極的に救助することで慰めようとする傾向があった.女児は,年中では,他児を直接慰めると回答することが多いのに対して,年長では,他児を教師のところに連れて行き,教師に慰めてもらうと回答することが多かった.自己評価に関して,年中男児のみが,全般的に肯定的な評価を下した.また,年長女児は,他児を教師のところに連れていくという方略を生成したときのみ,慰めることができると肯定的な評価を下した.