広島大学心理学研究 2 号
2003-03-28 発行

無関連スピーチと構音抑制が時間評価に及ぼす影響

Effects of irrelevant speech and articulatory suppression on time estimation
吉田 有美子
全文
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Abstract
本研究は,Baddeley(1986)のワーキングメモリ・モデルに基づき,音韻ループと時間評価の関係を調べることを目的とした.音韻ループは,音韻ストアと構音コントロール過程という2つの下位システムに分けられる.そこで,それぞれに干渉することが時間評価に対する記憶セットサイズ効果にどのような影響を及ぼすのか,またその影響の仕方に違いがあるのかについて,2つの実験で検討した,実験には健常な大学生および大学院生が参加し,いくつかのアルファベットを記憶しつつ2500msの時間作成課題を行なった.同時に,無関連スピーチと構音抑制により音韻ストアと構音コントロール過程に干渉した.その結果,干渉課題のない条件では,記憶セットサイズが大きくなるほど作成時間が長くなった.一方,干渉課題により記憶セットサイズ効果は消失し,その干渉効果は音韻ストアへの干渉の方が大きかった.また,構音コントロール過程への干渉のみが作成時間の短縮効果を示した.これらのことから,音韻ストアと構音コントロール過程が時間評価に及ぼす影響の仕方には何らかの違いがあり,構音コントロール過程の方が時間評価と関わりが深いと考えられる.
著者キーワード
時間評価
音韻ループ
無関連スピーチ
構音抑制
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