数の見積り能力の発達に関して,近年では数直線課題を用いて多くの研究がなされており,提示した数と見積った数とのズレが大きい対数型から正確な直線型へと数表象が移行することが示されている。小学生を対象とした研究では,移行には見積りの際の基準となるアンカーポイントの使用が関連していることが報告されており,本研究では,幼児を対象に手がかりを操作することによりアンカーポイントの使用について検討した。年中児と年長児99名を対象に,O~20の数直線課題を用い,中点手がかり,単位手がかり,手がかり無しの3つの条件を実施した。その結果,中点手がかり条件では,手がかりの効果が一部示されたものの,単位手がかり条件では,手がかりの効果が見られなかった。また,中点手がかり条件も,比率的判断を行うために中点を用いたのではなく,外的アンカーポイントの使用と同様に手がかりを使用したことが示唆された。以上より,幼児には就学後で見られたような比率的な判断で数量を見積ることや,1単位を意識した計数方略が困難であると考えられた。