大学生にとって,親は身近な相談相手となり得るが,親への相談行動やその利益とコストに関する研究は少なく,利益とコストを測定する尺度も作成されていない。本研究では,親への相談行動の利益・コスト尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することで,親への相談行動に特有の利益・コスト尺度を作成した。次に,親への相談行動意図や利益・コストの性差と父母差,相談行動に影響を及ぼす変数を検討した。そして,女性の方が母親に相談しやすいことが示された。また,親との信頼関係が相談実行の利益である「ポジティプな結果」を予期させ,親への相談を促進させることや,親からの心理的分離が相談回避の利益である「自助努力による充実感」を予期させ,父親への相談を抑制させることが示された。