保育者の保育行為の背景となる認知的側面は,子ども認知,信念,実践的知識,子ども理解などテーマや領域ごとに研究されてきた。そこで本稿では,保育者の子ども理解に基づいた保育行為を体系的に捉えるために,これまでの研究を整理することによって,今後の保育研究に関する研究課題を検討した。従来の研究では,保育者の保育行為の背景となる認知的側面に関する概念が整理されておらず,実践に関する認知的側面を動的なものとして捉えられていない。また,その動的な認知的側面の獲得される過程が明確にされていないと考えられた。そして,これらの問題点を改善するために,人の経験や知識を元に作り上げられた心的枠組みであるメンタルモデルという概念を提案した。教師や専門家の持つメンタルモデルを検討した研究から,第一に,認知的側面の顕在化により自分自身の問題点の修正が容易になること,第二に,経験による変化の過程を捉えることができること。第三に、他者との比較検討・共有ができることが示された。以上より,保育者の子ども理解に基づく保育行為を捉える概念としてメンタルモデルが有効であると考えられた。