二重課題法や脳活動測定などの手法を用いた先行研究から,具象単語の意味処理に視覚イメージ処理が関与することが示唆されている。しかし,これまでの研究では主に単語の意味判断課題や記憶課題が用いられ、単語産出課題を用いた詳細な検討は行われていない。本研究では,具象単語の産出数や産出時の脳活動に視覚妨害課題が及ぼす影響を調べ,具象単語産出における視覚イメージ処理の関与を検討した。10名の成人女性に単語産出課題を実施し,近赤外分光法で課題遂行中の脳血流反応を記録した。単語産出課題は,単語の種類(具象・抽象)×視覚妨害(あり・なし)の4条件で行った。結果,単品産出数には視覚妨害の影響はみられず,具象単語がより多く産出された。脳血流反応では,具象単語条件において左前頭で有意な視覚妨害の効果がみられた。抽象単語条件では有意な視覚妨害の効果はみられなかった。この結果は,具象単語の産出に視覚処理が関与することを示唆する。