本研究では重要な他者として依存対象に着目し,青年期における依存性様態が心理的適応や依存対象との関係へ及ぼす影響を検討した。研究1では大学生313名を対象に質問紙調査を実施し,依存性様態と主観的幸福感及び依存対象との関係評価の関連を検討した。その結果,互恵的な依存関係を築いている者は主観的幸福感が高く,依存対象との関係評価も良好であること,依存に対して否定的な態度を持つ者は主観的幸福感が低く,依存対象との関係を否定的に評価する傾向が示唆された。さらに,研究2において大学生13名を対象に面接調査を実施し,各依存性様態の対人関係の特徴を検討した。得られた語りから,依存を否定する背景には葛藤や懸念が存在すること,多様な援助者の認識によって依存対象に対する比重が低下すること,互恵的依存関係の達成には自他の分化と相互尊重が必要なことが明らかとなった。また,これらの特徴は対象関係の発達段階に対応する可能性が示された。