本研究は,沖縄県大学生を対象に,自己スキーマと特定の文化に最も多くみられる性格特性(モーダル・パーソナリティ)の関連について川平(1988)の性格特性認知課題を用いて検討した。性格特性認知課題では,予備調査を基に選定した沖縄県民と他県民のモーダル・パーソナリティが自己の性格にあてはまるか(自己判断課題),沖縄県民と他県民のどちらに特徴的か(モーダル・パーソナリティ判断課題)の判断を課した。また,モーダル・パーソナリティ判断課題の前には,自己の性格が日本人的か否かのフィードバックあるいは沖縄の自然風景写真を提示することによって,沖縄県民意識の操作を行った。実験の結果,自己判断課題において,自己記述的と判断された沖縄県民と他県民のモーダル・パーソナリティ数に出身県による差はみられなかった。しかし,沖縄の自然風景写真を提示後にモーダル・パーソナリティ判断課題を課した場合,沖縄県出身者は沖縄県民のモーダル・パーソナリティを正確に識別できることが明らかになった。以上の結果は,現在の沖縄県民においては自己スキーマとモーダル・パーソナリティの関連が希薄化していることを示唆している。