2012年4月から日本の中学校では,新学習指導要領で示された「生きる力」を育むという基本理念に基づき,「知識や技能の習得とともに思考力・判断力・表現力などの育成」を重視した指導をすることとなった。具体的には,「基礎的・基本的な知識及び技能を習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力等を育むとともに,主体的に学習に取り組む態度を養うためには,言語活動を充実させる」という指針が示された。言語そのものを学習対象とする英語科教育おいて,「思考力・判断力・表現力の育成」を議論するには,「談話能力」の育成や伸長を考えることが不可欠である。小論では,日本人中学生の英語「談話能力」について測定を試み,その結果を報告するとともに,そこから窺える課題の一端を考えてみる。筆者の作成した「日本人中学生の英語『談話能力』診断検査」の調査結果から,(1)中学生には「原因-結果関係(cause and effect relationship)」や「全体としての理解が求められる談話(discourserequiring global understanding)」の理解などに課題があること,(2)「談話の先を推測するタスク」と「与えられた情報に続く英文を作り出すタスク」のスコアに相関が強いことなどが分かった。論理的「思考力」「判断力」そして豊かな「表現力」を育てるためには,「一貫性」をより意識させる指導が必要である。具体的には,“plus one (sentence) activity"と呼ばれているような表現活動,つまり「後に続く発話やセンテンスを考え,表現させる機会」をできるだけ多く確保することや,それを支援する教材開発が求められている。生徒が英語で論理的思考や判断