本研究では,中学1年生を対象にして学級を単位とした集団社会的スキル教育を実施する中で,社会的スキルの総得点が学年全体の平均値よりも顕著に低い5名の生徒に焦点をあて,社会的スキルの改善や孤独感の低減に及ぼす集団社会的スキル教育の効果を事例的に検討した。その結鼠5名中1名では,社会的スキル教育の実施後に社会的スキル総得点が学年全体の平均水準まで上昇するとともに,孤独感も低下し,集団社会的スキル教育による改善効果が認められた。しかし,他の4名では社会的スキルの上昇は認められたものの,学年全体の平均水準までには達しなかった。また,これら4名の孤独感にも顕著な変化はみられなかった。3つの社会的スキル下位尺度の変化パターンから,社会的スキル総得点の低い生徒に対する集団社会的スキル教育は,少なくとも自分から積極的に仲間に働きかける関係参加行動の改善には有効であることが示唆された。