本研究は,ニュートラルな評価的性質をもつと考えられる話題のみ(TO)のタイプの事前警告が恐怖アピール説得に及ぼす効果を,事前警告後一説得前の位相における心理過程に及ぼす影響から検討することを目的とした。説得者の恐怖喚起意図(FI)との結合タイプであるTO-FIタイプの事前警告のタイプの効果も,補助的に検討した。説得効果を測定する恐怖アピール群では,恐怖アピール(強恐怖アピール,弱恐怖アピール)と事前警告(TO事前警告,TO-FI事前警告,無事前警告)の2変数を独立変数とした。事前警告後一説得前の心理過程を測定する無アピール群では,事前警告(TO事前警告,TO-FI事前警告,無事前警告)の1変数を独立変数とした。被験者は342人の女子大学生であり,9条件の各々に38人ずつ無作為に配置された。その結果,TO事前警告は、恐怖感情を除くと,事前警告後一説得前の位相における心理過程に対して何も影響を及ぼさず,説得効果にも影響しないことが判明した。TO-FI事前警告は,事前警告後一説得前の位相における心理的リアクタンスを増加させるにとどまり,説得効果に影響することはなかった。ニュートラルな評価的性質の事前警告は,説得やそのほかの心理過程に対して影響を生じさせないことが確認された。