本研究の目的は,Sloboda(1999)で示唆された,日常生活での音楽聴取行動の背後にあると考えられる音楽聴取傾向を量的に測定し,その特徴を記述することであった.大学生808名を対象に調査を行った結果,聴取傾向には気分優位的聴取傾向と活動随伴的聴取傾向が存在すること,それらの聴取傾向は相対するものではなく,同一個人内に2つの傾向が存在し,それぞれの程度の違いが音楽聴取行動に関する個人差を生じるということが示唆された.また,2つの聴取傾向は,音楽の聞き方や聴取時の状態との関連の強さに違いがあることがわかった.