本研究は,自己愛的甘えと2 つの自己愛傾向 ( 誇大型・過敏型) との関連を検討することを目的とした。大学生を対象に,自己愛的甘えと誇大型自己愛傾向,過敏型自己愛傾向を測定する尺度を用い,質問紙調査を行った。大学生255 名の回答を分析の対象とした。まず,自己愛的甘えと誇大型自己愛傾向,過敏型自己愛傾向との相関係数を算出した。その結果,中程度の正の相関が認められたのは,過敏型自己愛傾向のみであった ( r=.42~55)。次に,対象者を2 つの自己愛傾向の得点により,それぞれ高群と低群に分類し,「自己愛的甘え」の3 下位尺度得点において,誇大型自己愛傾向(高・低)×過敏型自己愛傾向 ( 高・低) の2 要因分散分析を行った。その結果,誇大型自己愛傾向の主効果は「許容への過度の期待」のみに,過敏型自己愛傾向の主効果は3 下位尺度全てにおいて認められ,いずれも高群が低群よりも有意に高かった。以上から,自己愛的甘えと2 つの自己愛傾向の関連が認められ,特に,過敏型自己愛傾向と密接に関連することが示された。