本論文は教職経験を積んだ教員の振り返りに基づいて, 教授に関する考えをより良いものへと変容させるために活用できる, 小規模ではあるが探求的な研究である。本研究では教師自身の「言語学習の振り返り」, どのように教室で言語教育を実践しているか, また母語知識を活用しているか, などの話題を扱っている。前もって準備されたいくつかの面接項目によりデータが収集され, 先行研究で扱われている視点に基づいて吟味された。本研究の結果から, 教授に際して「指導法の分類」を用いるには限界があり, 教師にとってはもう少し広い視野での分析が必要であることが分かった。また, 面接データからは, 母語に関する知識がいろいろな方法で活用されていることが分かった。例えば, 深層に関わる概念の説明, 談話構造の説明, 学生の方略的能力の指導, 言語形式に焦点をあてた翻訳活動などである。さらに, 主体性がより期待される大学英語教育システムに関して, 教育的示唆が議論された。学生の英語能力の伸長に資するさまざまな指導技術が確保されるならば, 教養教育の共通シラバスの内容と方向性を同じくする一連の教材例の開発と普及は, 指導を支援のための一助となるであろう。