音楽文化教育学研究紀要 17 号
2005-03-25 発行

Eine "Long-seller Clavierschule" im 18.U.19.Jh. : Eine Ubersicht der Georg Simon Lohleins Clavierschule

Ono Ryosuke
全文
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Abstract
C.P.E.バッハの「試論」を挙げるまでもなく、18世紀には数々の鍵盤楽器教本が出版された。特に、18世紀後半からの出版数の増加はLISMを参照すれば一目瞭然である。その中でも、本橋ではほとんど知られていないレーラインGeorg Simon Lohleinの鍵盤楽器教本を取り上げその概要を見渡したい。この教本は1765年にライプツィヒで出版され後9回改訂され、100年弱にわたって出版され続けた「ロングセラー」鍵盤楽器教本であった。ロングセラーであったのみならず、「ベストセラー」でもあったことが当時のいくつかの証言が物語っている。大変長きにわたる改訂であり、無論初めの著者は第4版が日の目を見たところで亡くなり、それ以降は別の人物によって改訂作業が進められた。その中には現在日本のピアノ教育を語る上で決して欠かすことにできないチェルニーCarl Czernyの名が登湯する。本稿では紙面が限られているので長きにわたる改訂に着目し、各版の目次やタイトルなど改訂にかかわるごく基本的な資料のプロフィールを提供することを主たる目的とし、その中でも指の機械的な練習にさかれた部分だけを取り出して考察する。その際重要となるのは、「エチュード・練習曲の時代」である。現在日本で用いられるピアノの練習曲は18世紀末のクレメンティを初めとした19世紀に書かれた練習曲である。このエチュード・練習曲は一般に19世紀に入ってから多く書かれた。まさにこのレーラインの教本はエチュードの時代前後を歩んだ教本なのである。そしてレーラインの教本も、「機械的な指使い」の章を中心にエチュードの時代へと流れ込んでいくのである。