わが国における特別支援教育は,平成25(2013)年度から学年進行による特別支援学校高等部での新教育課程の施行が始まり,前年には,中央教育審議会からインクルーシブ教育の在り方に関する答申も出された。特別支援教育の場面が多様化する一方で,特別支援学校における専門性の向上が改めて求められている。特別支援学校(聴覚障害)においては,これまでの手話の使用を巡る議論が,その広がりとともに学力の向上に向けた議論に移ってきているといえる。今後の聴覚障害教育の充実に向けた視点について,手話使用の先進国であるスウェーデンにおいても同様の傾向が見られる。スウェーデンにおける聴覚障害教育は,1980年代から,ろう学校を中心として手話を用いた教育が展開されてきた。2007年にスウェーデン国内で聴覚障害教育に関する全国レベルでの実態調査が行われ,その結果が報告書にまとめられた。本稿では,筆者らによる報告書の翻訳の概要について紹介し,今後の聴覚障害教育における視点について述べる。