聴覚障害生徒および健聴者を対象として,名詞と動詞の共起対を産出させる課題を実施した。その結果,健聴者による共起対の産出数が聴覚障害生徒の産出数を上回り,聴覚障害の有無が名詞と動詞の共起性判断に影響をおよぼすことが明らかになった。また,学年が進行しても,聴覚障害生徒における共起対の産出数は増加傾向をみせず,名詞と動詞の共起性を判断する能力が,中学校段階では顕著に発達しない可能性も考えられた。あわせて,聴覚障害生徒および健聴者ともに,共起対の産出のしやすさは動詞の活用形や自他の種類によって異なることが示された。さらに,マトリックスを用いて共起対のパターン分析を行ったところ,聴覚障害生徒による名詞と動詞の共起性判断は,健聴者ほど柔軟性に富まず,固定化している傾向が示された。だが,学校生活の場面を想起させるような文脈においては,特定の共起対が健聴者よりも多く産出される可能性が考えられた。