学部・附属学校共同研究紀要 39 号
2011-03-24 発行

確かな学力の育成 : 国語基本教材の授業アプローチの方法 『史記』(司馬遷)の場合

To Cultivate Solid Academic abilities : An Approach toaJapanese Fundamental Material, "Shiji" by Simaqian, in classical Chinese
岡本 恵子
黒瀬 直美
全文
1.11 MB
AnnEducRes_39_129.pdf
Abstract
確かな学力の育成のためには, 国語科では基本教材のあり方を常に問い直す試みが不可欠である。本研究は, 中学校・高等学校の文学的文章の基本教材の授業においてどのような読みの学力を育成することができるかを, その授業アプローチに焦点化して3年間にわたって実践・検証したものである。

第1年次は中学校の基本教材である「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ), 第2年次は高校の基本教材である「羅生門」(芥川龍之介), 第3年次に当たる今年度は, 高等学校古典(漢文)の基本教材である『史記』(司馬遷)を取り上げた。『史記』の基本教材としての今日的価値を明らかにした後, 「項羽本紀」の「鴻門之会」に絞って実践を行った。全体での読解授業に入る前に, 当該部分を生徒独自に読み解かせた。そして, 授業の前後に人物・表現・場面の3点に関してアンケートをとり, 分析し, アンケートから導かれたことを土台に効果的なアプローチの方法を提案した。殊に学習者が『史記』の叙述の何に着目し, それをどのように評価したかを踏まえた。具体的には, 「鴻門之会」の「身振りの文学」としての性格を基底に据えたアプローチの提案となった。