本稿は,全国的なアンケート調査をもとに,日本のドイツ語授業において,クラスルーム言語としての日本語あるいはドイツ語が,どのような目的をもって使われているか,また使われるべきであるかを分析し,考察するものである。全国50 大学における教員64名,学習者約2,500名に対し,言語の優位性について書面での回答を求めた。前号掲載の拙論(広島外国語教育研究第17号)においては,教員の言語使用に関する教員自身の回答を質的に分析した。本稿では,学習者の回答を質的に分析し,記述内容からドイツ語の優位性,日本語の優位性,そして授業内で使用される言語に対する希望に分類し,結果を提示する。
この分析結果からわかることには,学習者の言語レベルの上昇に合わせて,目標言語による教示に対し,より明確な要望が記されており,特に初級学習者においては,何か理解できないことがあったときには,母語である日本語による補足説明が必要だという主張がみられることなどがある。また,ドイツ人教員には,学習者の質問に対して日本語で答えられること,そして授業中に日本語を使用するのであれば,それが理解しやすい日本語であることが求められている。一方で日本人教員に教わっている学習者は,目標言語の使用が学習者の言語レベルに適したものであることを強く求めている。