広島外国語教育研究 15 号
2012-03-01 発行

Ansichten japanischer Studierender über die Unterrichtssprache muttersprachlicher Deutschlehrender : Ergebnisse einer Fallstudie

日本人ドイツ語学習者のドイツ人母語話者のクラスルーム言語に関する見方 : 事例報告
全文
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h-gaikokugokenkyu_15_103.pdf
Abstract
本稿では,日本のドイツ語授業におけるクラスルーム言語を学習者の視点から考察する。筆者は授業で使用される言語を改善し,学生の要求に応じてより効果的に言語を使用するという目的のため,授業での使用言語について現在進行中のアクションリサーチプロジェクトの一環として調査を行った。本稿ではこの研究プロジェクトを概説し,筆者が担当するクラスで実施した学生へのアンケートの役割とその方法を具体的に述べる。さらに,目標言語であるドイツ語と学習者の母語である日本語が授業においてどのように使用されたのかを詳細に論じる。

調査にあたっては,選択必修の教養科目としてベーシック・ドイツ語を選択した工学部第三類(化学・バイオ・プロセス系)の学生を対象とした。これらの学生に対して,学期の始まりと終わりにドイツ語の授業で教員が使用した言語に関して,質的・量的な質問項目を含むアンケート調査を行った。このアンケート結果から授業において筆者が使用したクラスルーム言語やドイツ語と日本語を話す割合に関して,学生は全体的に満足していることが分かった。しかしながら,日本語で説明する際の日本語の正確さと,ドイツ語で話した際に学生が理解しづらい表現を使うことがあるという点においては改善の必要があることも判明した。全体的にみると,調査グループの学生たちは目標言語であるドイツ語を理解するために日本語による説明があるほうが望ましいと考えている。同様に,ドイツ語を過度に使用することは,ドイツ語を理解する妨げになるという理由から逆効果ではないかと思われる。このケーススタディの結果は,選択必修科目としてドイツ語を学ぶ学生たちの要求と期待に応じたクラスルーム言語の使用を考える際に有用である。
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