食品の安全・安心に対する消費者ニーズがたかまり, そのニーズに応えるためのコストが増大している。そのなかで, トレーサビリティシステム導入の責務は, 企業に業務の増加とコスト・アップというマイナス要因を突き付けている。本稿は, 筆者が食品製造事業者のトレーサビリティシステム導入を支援する事例研究である。食品の安全・安心を経営戦略として捉えることにより, 品質・衛生の向上と業務革新を同時に実現する契機として取り組む事例である。このような経営環境と経営戦略がどのように原価計算に影響をおよぼすのか, ITの進化が原価計算のどの部分の可能性を広げるのか。新たなコストの認識と原価計算システムの構想を試みたものである。