コミュニティにおける人間関係が希薄になっている現代の社会状況では, 高齢者を近隣および近隣組織で"見守り, 助け合う"機能が失われつつある。約2, 431万人の全国高齢者のうち介護認定者数は14.6%の約355万人である。見方を変えれば, 残り85.4%の約2, 076万人は, 元気な高齢者を含め介護認定に至らなかった高齢者といずれ介護が必要となる高齢者であり, 介護保険制度以外の方法でサポートが必要な高齢者といえる。身近なコミュニティのネットワークが脆弱な社会状況において, 今後急速に増えることが予想される高齢者が, 安心して地域で暮らしていくためのサポート・システムを検討することは社会的に重要である。本論文は, 地域高齢者に関連する組織側から高齢者を見守っていく社会システムの現状と問題点について研究するために, 広島県H市においてヒヤリングによる実態調査を行い検討したものである。調査結果から, H市においては地域福祉推進の役割を持つ各組織や人々は, それぞれの活動方針の下, 個々に活動を行っているものの, 高齢者のサポートネットワークとしての統一した動きや情報共有と連携が図られていないことが明らかになったと同時に, 情報共有の意義を認め, 連携を望んでいることが確認された。