本研究は, 勤務先において, 新卒新人助産師(以下, 新人助産師とする)として臨床の現場に入職してきたものが, 組織の期待通りに成長できないことに端を発している。この事象に関して, さまざまな調査を行った結果, 一部の病院に限定されたことではないことが示された。新人助産師が臨床の現場で育つことができないのはなぜなのか, 予備調査の結果と文献レビューをとおして検討を行った。新人助産師が成長できないのは, 彼女らの職業意識の低さが要因の1つではないかと考えられた。この仮説を検証するために, 全国の助産師養成課程を持つ教育機関において助産学を専攻し, 社会に巣立つ直前の学生に対して職業レディネス尺度を用いて調査を行った。その結果, 対象者のすべてが高い職業レディネスを持っているわけではないにもかかわらず, 大半が卒業時に就職先を決定でき, 社会に出て助産師として勤務していることが見出された。その後, 一部の対象者に追跡調査を行ったが, 入職後には職業レディネスを成熟させることが困難であることが示唆された。したがって, 低い職業レディネスの人材が, 入職後も職業レディネスが成熟しないまま勤務し続けている状態が存在していると考えられ, 彼女らの職業意識の低さが入職後の助産師としての成長阻害要因の1つとなりえるのではないかと考えられた。また, 助産師のキャリア形成が, 助産学を専攻した時点からはじまっていることを考慮すると, 助産師養成課程の使命には, 職業意識を高めることも含まれるといえる。