病院の最高管理者である病院長が社会的使命の実現に向けて, どのような問題を課題と考えているのかを明らかにする。さらに, 安全性と質向上, 経営の効率化と安定という一見相反する課題に対する病院管理に向けて, 基準の異なるさまざまな選択肢の中から何を優先し, 意思決定を行っているのか, その実態を知ることを目的に調査を行った。まず病院の取り組むべき短期的課題としては"安全管理対策""顧客ニーズの把握""他病院との競合・競争状態"と回答した割合が多かった。経営的対応の共感度合いでは"財務の健全化が最優先"を「まったくそのとおりだと思う」と回答した割合がもっとも多く, "医療ミス回避のためには経費比率が上昇しても品質を重視する"は「あまり思わない」と回答した割合が多かった。安全管理の仮想的成果に対する複数プランの選好では, もっとも安全対策として望ましいオプション6の順位づけでは一般医療法人の病院長が公的病院や特定医療法人の病院長より下位の選好者が多いという傾向がみられた。以上の結果から, 病院長は医療の安全性に対する保証の必要性は十分に理解しているが, 安全性が第一義ではなく, それを実行するための経営の安定・効率化の基盤固めが先決であると考えていることが示唆された。