広島大学マネジメント研究 Issue 2
published_at 2002-03-20

アイデンティティ意味論とグローバリゼイション <論説>

Semantics of Identity and Globalization <Article>
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1.15 MB
KJ00000053540.pdf
Abstract
現代社会の分析, とりわけ国際関係の考察において, 「アイデンティティ」は欠かせない概念となっていることは疑いないところであろう。国際関係, 或いは異文化コミュニケーション状況において, 文化的自己性, 独自性, 差異等の語感を示唆するものとして用いられる。だが, 「文化」と近似的に用いられることで単に個人意識の外的装置というだけでなく, 精神構造を内的に規定し, 行動の動因となっていることも, 一定程度理解されている。しかしだからこそ, 分かり難い面を持つことも事実であり, 正確な意味の把握が, とりわけ片仮名表記をしている日本ではされていると言い難い。本稿はアイデンティティの意味を再考しようとするものである。しかし, 単に提唱者であるエリクソンの理論を再検討するだけでなく, そこに現代的意味を読み込み, 現在進行中といわれるグローバリゼイションに於けるその概念の重要性を検討する。基軸となるのは, 「差異化」と, アイデンティティを先鋭化する, 近代社会と国際関係の現代的状況である。
Abstract
For examining contemporary society, especially in international relations, there would be no doubt that ""identity"" is an indispensable concept. The term is used to signify one's own culture, uniqueness, difference and so on in the context of international relations or intercultural communication. It is generally understood that ""identity"" is not only an outward apparatus of individual consciousness, as shown in its close usage to ""culture, "" but also that it confines the mental structure as a causal factor of behavior. That is why, the concept is somewhat difficult to undershand. In Japan, especially, where the word is written in katakana, it can be hardly said that its concept is complelely understood. This paper aims to reconsider the meaning of identity. No