「行政評価」は, 日本の自治体において1990年代末の5年間に急速に普及しつつある制度であり, 行政評価手法などの研究自体も急速に増加している。しかし, 近年の行政評価をめぐる議論は論者によって多様であり, 行政評価の手法の理論に関する研究と実務現場における実務者の認識との間には隔たりが大きい。地方自治体の行政実務の現場における「事務事業評価」などを端緒とする行政評価制度の導入の意義と革新性は, 自治体の組織変革の過程において, 既存の行政組織にフィットした簡便で実用的なツールとして, マネジメント改革の梃子としての作用しえた点にある。本稿では, 民間企業における経営理念・手法, 成功事例などを行政現場に導入を通じて行政部門の効率化・活性化を図るニュー・パブリック・マネジメントを基本に, オズボーンの言うReinvention(政府の再発明)という観点から, 地方自治体の「組織変革」に行政評価の果たした役割の分析を通じ, 自治体という組織の改革に必要な条件を明らかにしている。行政評価とは, アメリカ流のパフォーマンス・メジャーメント, パフォーマンス・モニタリング(業績測定・監視)が, 政策科学や経営学の素地が不十分であった日本の地方自治体において, 「事務事業評価」等という日本独自の形に変形・制度化され, 実務のなかで確立されてきた概念である。行政評価制度は, 官僚制組織のなかに, 予算・事務・事業といった既存の行政組織の基本的スキーマを用いて, 業務の継続的改善と成果志向のマネジメントを, 事後的に埋め込み, 組織の根源的な仮定として働いてきた組織文化の見直しを迫るツールとして作用しうる。しかし, 単に評価制度を導入しても行