企業会計においては, 通常, 会計情報の比較可能性が重視される傾向がある。このために提唱される会計制度が統一会計制度や国際会計基準である。このような会計制度の充実によって, たしかにその比較可能性は向上するが, 一方, 会計情報の事実描写性を毀損する可能性がある。さらに, より積極的に, 企業経営者のメッセージが会計情報利用者に伝達されるという効果が減損されることも懸念される。このような観点から, 会計基準の多様性が制度的に容認できる。本稿では, こうした観点から, 従来, 会計情報にバイアスをもたらすものとして排斥された会計基準多様性を弁護している。