感情を表す言語の情動的使用と,意図を伝達する陳述的使用の解離は,感情を伴って意識的な努力なしに発せられる言葉(感情語)の発話過程が,そうでない語(非感情語)の発話過程とは異なる可能性を示す。本研究は,これら2つの発話過程の違いを検討するための実験で用いる感情語と非感情語を選定するために行った。調査lでは,NTT日本語データベース(天野・近藤,1999)から選んだ感情語と非感情語の候補計116語について,感情度,自動性,一般性,心像性を5段:階で評価した。その結果,感情度と自動性の問には強い相関関係があった。両者を平均した得点(感情性得点)が高い語を感情語,低い語を非感情語として刺激候補55語を選定した。調査2ではこの55語を聴覚的に呈示し,調査1と同様の評価を行った。その結果得られた感情性得点などを基準に,感情を喚起しやすく日常的に使う頻度が高い感情語14語と,それらと語頭音,拍数,音声親密度,およびアクセント型が同じ非感情語14語を選定した。