本稿は,日本特殊教育学会第50回大会の国際小委員会企画シンポジウムで配布された資料を修正・加筆したものである。韓国の特殊教育が日本とその方向が大きく変わったのは,1994年の改正「特殊教育振興法」である。統合教育,差別の禁止,個別化教育計画(日本の個別の指導計画にあたる),保護者の権利,差別に対する罰則が明記された。そのあと2007年に「障害者などに対する特殊教育法」が作成され,特殊教育の再定義,特殊教育対象者の義務教育年限の拡大(幼稚園から後期中等教育まで),差別の禁止の強化,教員の資質向上,特殊教育支援センターの設置及び運営,3年ごとの特殊教育実態調査,障害の早期発見,特殊教育対象者の判定及び就学,教育課程の運営(知的障害児の教科書の作成),インクルーシブ教育の実施,個別化教育の徹底,進路及び職業教育の充実,巡回教育,特殊学校及び特殊学級の設置基準の改善,大学課程の障害学生支援及び生涯教育支援の充実がうたわれた。しかし,地方公共団体の法令遵守の問題,教員に加わる新たなストレス,インクルーシブ教育のための教員養成の課題,一般教員の障害児に関する啓発不足等,様々な困難が残されている。