本研究は,ビデオ教材を試作し,実際の試行を通して,高機能広汎性発達障害(以下,HFPDD)児・者の間接発話理解を促進するための指導教材を考えていく際の資料を得ることを目的とする。要求,非難,助言,提案の目的を持つ計10個の間接発話場面を作成し,そのうちの5つずつをHFPDD の中学生3名に試行した。その結果,1)生徒全員が,今回用いた間接発話課題をほぼ理解できていた。2)2名の生徒が,最初の課題で一度のビデオ提示だけでは正答できなかったことから,静止画や字幕などを用いて登場人物や場面の説明等を行うことの必要性が示唆された。3)映像を見ることに集中している様子がうかがわれ,教材としてのビデオの利用可能性が支持された。質問の内容や順序,学習課題やテストの内容・構成等,指導教材作成のために検討すべき課題は多く残されているが,これらの結果は,今後の教材作成において有益な情報の1つになると考えられた。