本稿では,社会科において記述的な学習ではなく意思決定能力の育成に踏み込んで経済教育のあり方を検討した。経済の原理を実際の活動を通して経験することにより,有効な意思決定能力が育成できるという仮説に基づく。教材は全米経済教育評議会(NCEE)の日本でのセミナーで提示されたものを修正している。希少性と機会費用を前提に経済的に合理的な意思決定が行われているか,という視点で経済を分析している。講義は活動を説明するものにとどまらず,様々な活動を実施し,その活動を反省していく中で経済の原則について理解していく形式で授業を行う。アメリカの教材であるが,活動が進むにつれ積極的に生徒が参加できる課程になっている。又,日本経済の発展の理解については,従来の歴史的な記述によるものではなく,経済理論を導き出すというプロセスを通じて学習する。その際,市場原理とイノベーションとの関連で日本経済の発展を分析する授業を構成した。