本研究では,教育実習生の授業批評のあり方に考察を加え,その課題を明らかにするとともに,授業実践力の向上につながる授業批評のあり方を追究する。教育実習生の授業批評は,そのままでは授業者に授業改善へ向けた内省を迫る批評となり得ていない。教育実習生の授業批評に関する課題は以下の3点に要約できる。・学習者,教師,教材相互の関係に具体的なレベルで言及した批評をすること。・単元全体の学習目標との関わりで個々の学習活動を見極めた批評をすること。・学習者の思考を揺さぶる教師の働きかけに向けた批評をすること。教育実習生の授業批評に関する課題を克服するためには,教育実習指導教員による内省誘発型の補足的助言が重要な役割を果たす。そこでは,授業における学習促進場面および学習停滞場面を具体化させるとともに,そのような学習状況に至った原因を授業者である教育実習生に内省させるような助言が有効となる。授業批評は,授業者に当該授業の成果と課題とを具体レベルで内省させ,授業改善の方法を授業者自身に発見させるようなものへと高めていくことが望まれる。