学部・附属学校共同研究紀要 38 号
2010-03-31 発行

特別な配慮を要する幼児の「就学」のための体制作り : ドキュメンテーションを活用した「就学支援」と「連携」

A study about the making of the system toward entering primary school with a child with special needs
財満 由美子
林 よし恵
上松 由美子
湯浅 直子
菅田 直江
湯川 慶子
正田 るり子
落合 さゆり
真鍋 健
全文
2.08 MB
AnnEducRes_38_61.pdf
Abstract
本研究では, 特別な配慮が必要であると思われる幼児1名に対して, 「就学」を見据えた包括的な支援体制の整備を試みた。特に, 先行研究で指摘されている「アセスメント・カンファレンス・実践・サポートファイルの作成・小学校との連携」の流れを考慮に入れるとともに, そこで「ドキュメンテーション」と呼ばれる観察記録がどのような効果を持つのかを実際の事例をもとに検証した。

結果より, ドキュメンテーションは①「集約」と「拡大」を通して子ども理解を促進させること, ②双方の役割に変化を与えることで協同を促進させること, ③サポートファイル作成における「効果的な伝達」と「効率的な作成」に寄与すること, が明らかになった。また園内外のものがチームとして支援を行うにあたり, ドキュメンテーションの利用はそのハード面の整備としてだけではなく, 適切とされる考え方や行動の暗黙のルール, つまりチーム構造のソフト面にも影響をもたらす可能性があることが示唆された。それらをもとに, ドキュメンテーションが「就学」を見据えた体制作りにおいて積極的に活用できるツールとなりえることを指摘した。