ステアリン酸単結晶をベンゼン溶液中から育成し,結晶成長表面を光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察し,らせん成長理論を裏付ける成長らせんを確認した。
結晶成長らせんステップはいずれも異方性を示し,単結晶外形と一致する角度をもっている。光学的に観察された成長らせんには,単一らせん,複数のらせん,反対の符号を持つ2つの転位から出発した成長らせんのつくるループなどが識別されたが,これらはいずれも,らせん成長理論の予測と一致するものであった。不純物によると思われるらせんステップの局部的な曲りが観察されたが,これは不純物効果として説明されるだろう。レプリカ法による,電子顕微鏡を用いて,成長らせん中心付近の徴視的な観察を行ったが,その結果,光学的に確認された成長らせんは,10本以上の単一らせんが束になってできたmacro-spiralに対応することがわかった。