広島大学水畜産学部紀要 16 巻 1 号
1977-08-20 発行

Pasteurellosis in Cultured Black Seabream (Mylio macrocephalus)

養殖クロダイ(Mylio macrocephalus)のバストレラ症
Muroga Kiyokuni
Suglyama Teruyuki
Ueki Noriyuki
全文
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Abstract
1976年8月,岡山県水産試験場において種苗生産に関する一連の実験のために,沖出し後海面小割中で飼育されていたクロダイ(Mylio macrocephalus)幼魚に細菌性疾病と思われる流行病が発生し,約2週間の間に飼育されていた9,000尾のうち約8,000尾が死亡した。

それらの病魚には遊泳及び摂餌活動の低下ならびに体色の黒化が認められたが,そのほかの目立った病微は認められなかった。検査したほとんどの病魚の内臓諸器官から一種の非運動性細菌がほぼ純粋に分離された。

分離菌の形態学的・生理学的及び生化学的性状を調べた結果,本菌はPasteurella piscicidaに同定された。また分離菌をクロダイに接種したところ,比較的短時間で死亡せしめることも確認された。

なお,これらのクロダイが飼育されていた水域ではここ数年ハマチ養殖は行なわれておらず,また少なくとも沖出し後はこれらの魚にペレットのみを餌として与えており,今回の流行の感染源を明らかにすることはできなかった。

P. piscicidaは従来我が国ではハマチの類結節症の原因菌としてよく知られてきたが,今後はクロダイにおいても本菌感染症の発生に対する注意が必要と考えられた。