自然状態で生育するアオノリ,アマノリの金属含有量が海水の金属含有量により異なってくるかを調べるため,海水に金属を添加し,葉体中の金属含有濃度を調べた。アサクサノリ等の細胞層一層のParenchyma組織では,細胞部を中心にその両側に細胞充間物質とクチクル層の五層からなり,成分的には三層よりなっている。したがってとりかこまれた金属が葉体のどの部位に存在するか葉体を三層に分離し層別の金属含有濃度を調査した。添加金属はFe,Mn,Cdの3種で海水中の各金属濃度は対照海水の金属濃度10, 250, 1000倍とした。葉体の金属添加海水での培養時間は24×3時間,明期・暗期12×4時間とした。
アオノリの対照海水中の培養では各金属含有濃度はFe:478μg/g, Mn:116μg/g, Cd:Trace,24時間後の金属添加海水ではFe:1340μg/g, Mn:698μg/g, Cd: 58.5μg/gであった。
アマノリでは対照海水中での各金属の含有濃度はFe:200~300μg/g,Mn:50~60,Cd:0.5~1.5であった。金属添加海水では葉体中のFe濃度はあまり大きな増加はみとめられなかったが,Mn,Cdについては高濃度海水において葉体中の金属含有濃度は培養時間と比例的関係が認められた。アマノリ葉体の部位別金属含有濃度について,Feはどの部位にも平均的に分布し,Mnでは細胞部に少なく表層と中層に高い含有濃度を示した。また,とりこみについても中層部が強く,表層部でもとりこまれた。Cdの場合は細胞部の濃度は海水中のCd濃度が高くなっても変化は少なく,中層部へのとりこみが非常に多かった。明期暗期別の金属のとりこみについては,Feでは明白な傾向が認められなかったが,Mn,Cdについては興味ある結果が得られた。すなわち,Mn,は明期にとりこまれ,暗期にはとりこまれない。Cdは明・暗期に関係なく培養時間と比例的にとりこみが行なわれることが明白になった。