イボイモリの発生を,イモリおよびシリケンイモリの発生と対比しながら,岡田・市川(1947)の発生段階図によって記述した。イボイモリの受精卵は径3.0mm~3.2mm。卵包は球形でゼリー質の3層からなる。動物極側は淡黄褐色,植物極側は淡黄白色。胚および幼生期の発生はシリケンイモリよりはるかに速く進行する。イモリと比べると卵割期から神経胚の初期までは発生が遅れるが,それ以後は発生が速く進む。他の2種の発生と比べて特に外観的に異なる点をあげると,(1)眼胞の輪郭および瞳の形成が遅れること,(2)平衡桿の発達が悪いこと,(3)腹部が多量の卵黄のため,尾芽期まで球形をしていること,(4)外鰓の発達が極めてよく形は櫛状であること,(5)背部の膜びれは胴部のほぼ中央から始まること,(6)後肢丘の出現が早いこと,(7)後肢2趾期頃から肋皺がみられること,(8)前肢第5指の出現が遅いこと,(9)頭部諸器官の原基の輪郭がよく目立つこと,(10)心臓部付近をおおう皮膚が大きくふくらんでいることなどである。