本研究は,学習集団の形成における「組織する」教師のリーダーシップ(吉本,1974)が,体育授業においてどのように具現化されるのかを事例的に考察することを目的とした。小学校4年生のフラッグフットボールの授業(全15時間)を対象として,教師の教材解釈が書かれた資料を対象に,「教材の訓育性」の視点から考察を行った。また,授業中の教師の指導言を対象に,「対象への指さし」,「集団思考の組織化」の視点から考察を行った。その結果,フラッグフットボールは,プレイヤー全員の役割行動を明確にし,全員が合意した上でゲームに参加しなければ得点に結びつかないといった訓育的価値を有した教材であると考えられた。そして,教師は導入場面やゲームの場面で,発問を用いながら「対象への指さし」を行ったり,単元中盤に「集団思考」場面を設定したりして,授業の目標である戦術的課題の解決へと子どもたちを導いていたと考えられた。