本研究では,ある現職教師を対象として実施した理科授業の観察とインタビュー調査の事例を取り上げ,ティーム・ティーチングによる実践を通した教師の力量形成について考察した上で,その考察と関連させながらRothやTobinらの研究におけるコティーチングの特徴を明らかにし,教師の実践的指導力の形成におけるコティーチングの可能性について検討することを目的とした。その結果,コティーチングは,複数の教師が授業実践の責任を分かち合い,それぞれが当事者としてその時・その場・その状況における実践上の問題の解決に協同的に携わるとともに,必要に応じて互いに実践を委ねたり,引き受けたりすることを認める方法であること,それによって「行為における省察」の機会が生じるなどの点で実践的指導力の形成に寄与する可能性があることが指摘された。