本研究では,失業率分析に関する実証分析をレビューし整理したうえで,地域失業率分解に適したモデルであるNAIRUモデルに着目しその問題点を検討し明らかにする。失業率分析モデルは,理論タイプ別にSingle equation model, Implicit model, Accounting identity modelの3つに分類できる。その中で,NAIRUモデルは構造要因を明示的に内包しており,わが国各地域で統計データを選択的に投入可能であり,構造要因やその他の要因との関係において説明可能となっている。しかし,わが国の地域における実証研究に使用する場合,変数について次の2点が問題となる。(1)欠員率は質・量の面から労働市場の需要を的確に反映しているとは限らない。(2)構造要因に循環要因が含まれる。また,モデル式の問題は次の2点である。(1)UV曲線の円運動の動きにより構造的失業を過小または過大に推計する可能性がある。(2)地域間の人口移動要因が含まれていない。従って,わが国の地域失業率分解にNAIRUモデルを適用する場合,代替的な変数の探求や追加変数の選択によってモデル式の改良が必要であろう。