社会的企業(Social Enterprise)は,障害者を含む何らかの「弱さ」をもつ人々の働き口を創出する仕組みである。その出発点は英国にある。財政破綻からサッチャーリズムへの移行とともに,新自由主義のもと福祉予算の大幅な削減が行われ,いわば社会福祉と資本主義の共生した形態としての社会的企業が創設された。西ヨーロッパでは1980~1990年代に高い失業率を抱え,社会的企業の在り方について多くの研究・実践がなされてきた。一方,韓国でも英国から20年後の1997~98年度に財政破綻を起こし,新自由主義政策をとり,雇用のない経済成長を続け,社会の二極化現象を起こし,障害者の雇用問題,若年層の失業,雇用の減少等の問題が生じている。このような事態に対し,2007年に社会的企業法が設定された。本論では韓国の社会的企業導入の背景,基本方針,推進するための戦略と課題社会的企業育成法の内容,社会的企業の現状について説明した。韓国における社会的企業の推進は,国際競争の激化,社会的格差の増大,少子高齢化,雇用のない経済成長の問題等を解決するための創造的資本主義への一翼として社会的企業を位置づけようとしている。日本においては,障害者福祉と一般若年層の雇用の問題や高齢者問題を別々に考えている。韓国よりも少子高齢化が高く,社会的格差が大きく,高齢化を加速しながら人口減少を起こし,債務残高も財政破綻した国より高い状況にあるなかで,韓国の社会的企業の在り方を真摯に考える時期にきていることを論じた。