本研究は,コンピュータを用いた音声理解学習プログラムの素材候補として作成した音声刺激を5歳7ヵ月から6歳7ヵ月の幼児25名に対して提示し,その反応を分析することによって,学習プログラム作成のための基礎的資料を得ることを目的とする。試行の結果,1)喜びの音声は幼児にとってもよく理解されており,大学生による評定一致率と同レベルであった。2)怒りについては,男性モデルの音声は幼児と大学生で正答率に差が見られなかったが女性モデルでは,男児の正答率がより低下していることが示唆された。3)悲しみと驚きでは,怒りの場合とは逆に女性モデルの音声の正答率が高かった。4)嫌悪の音声の理解は,モデルの性別に関係なく難しかった。プログラム作成のために検討すべき課題は多く残されているが,これらの結果は,今後のプログラム開発において有益な情報の1つになると考えられた。