2002年に文部科学省が行った「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」によると,小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち,知的発達の遅れはないものの,学習面か行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生徒の割合は6.3%であり,そのうち「聞く」,「話す」,「読む」,「書く」,「計算する」,「推論する」の6領域に著しい困難を示す児童生徒が4.5%在籍すると報告されている。これら6領域に対する支援の在り方については,近年多くの研究がなされ,適切な支援の在り方が確立されつつある。しかし,典型的な学習障害や学習障害の児童生徒とは異なり,手指失認・左右識別障害・書字障害(失書)・計算障害(失算)の4症候で構成される発達性ゲルストマン症候群の児童生徒に対する支援については,症例が少ないために適切な支援の在り方が具体的に示されていない。
本研究では,発達性ゲルストマン症候群と診断され,算数学習において学習障害の様相を呈す児童について,その困難を改善するための支援の在り方を検証し,適切な算数指導の在り方について考察した。